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テングサ生産量解析
01 2020/12/28 伊豆白浜海水温とテングサ出品量(伊豆半島/伊豆大島)の関係
02 2021/08/04 伊豆大島海水温とテングサ生物量(伊豆大島)の関係
03 2023/06/09 近年のテングサ概況(西日本)
04 2023/07/10 黒潮大蛇行とテングサ生産量について 

03 2023/06/09 近年のテングサ概況(西日本)

 テングサは寒天やトコロテンの原料となる重要な水産資源である。生育域は南北半球の温帯〜亜熱帯であり全国的に生育しているが、国内水産資源としてのテングサは千葉県から長崎県にかけての、いわゆる太平洋ベルト地帯で多く採取されている。採取されたテングサは各地域の漁協が主となって入札会が開催され、落札されていく。本稿では過去5年のテングサ入札会の出品量、中でも特徴的であった西日本の入札会出品量を解析した。
 対象地域は「和歌山県・北部」「和歌山県・南部」「徳島県・北部」「徳島県・南部」「淡路島」「高知県・南東部」「愛媛県・南西部」「大分県・南東部」の8地域である(図1)。
 水産資源としてのテングサは、@生育する海域・地形、A抽出される寒天質の性状(ゼリー強度・粘度)から、経験的に大きく「外洋環境で生育するテングサ(※1)」と「内湾環境で生育するテングサ(※2)」の2グループに分類される(表1)。「和歌山県・南部」「徳島県・南部」「高知県・南東部」は「外洋環境で生育するテングサ」に該当する。「愛媛県・南西部」「大分県・南東部」は緯度的には「和歌山県・南部」「高知県・南東部」に近いが、「海域・地形」や「抽出される寒天質の性状」から判断すると「内湾環境で生育するテングサ」に該当する。
 各地域の入札会出品量を表2に示す。「和歌山県・南部」「徳島県・南部」「高知県・南東部」は減産傾向である一方、「和歌山県・北部」「徳島県・北部」「淡路島」「愛媛県・南西部」「大分県・南東部」では増減しているが減産傾向とはいえない(図2〜図7,表3)。
 近年、テングサの生産量は黒潮の蛇行の影響を受けていると言われている。外洋環境が黒潮の影響をより強く受ける場合、本解析と合致する。実際、外洋環境は黒潮の影響を受けやすいと思われる。内湾環境で生育するテングサの生産量は黒潮の影響のみでなく、他要因(海水温・栄養塩等)も影響している可能性がある。
 入札会の出品量は台風や梅雨、入札会の落札価格等により変動する。しかし、テングサの需要は高く、生息していれば採取され出品されていく。出品量と生物量はリンクしていると考えられ、本稿の結果は生物量の変動をある程度表しているといえる。
 本稿を読んだ方が海洋環境と生産量の関係に興味を持ち、水産資源保護・増産の一環として今後の研究課題として頂ければ幸いである。

※1:外洋環境で生育するテングサ:波が強い海域や複雑な地形で生育するテングサ。
               抽出される寒天質のゼリー強度が高い傾向にある。

※2:内湾環境で生育するテングサ:波が穏やかな海域で生育するテングサ。
               抽出される寒天質の粘度が高い傾向にある。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:テングサの産地


表1:各地域のテングサ分類


表2:各地域の入札会出品量(kg)


図2:和歌山県テングサ入札会の出品量(kg)


図3:徳島県テングサ入札会の出品量(kg)


図4:淡路島テングサ入札会の出品量(kg)


図5:高知県テングサ入札会の出品量(kg)


図6:愛媛県テングサ入札会の出品量(kg)


図7:大分県テングサ入札会の出品量(kg)


表3:各地域のテングサ入札会(纏め)


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