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毎年3月から10月にわたって行われるてんぐさ入札会の報告です。
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00 2025/01/25 2024年(令和6年) テングサ概況(2024年1月〜2024年12月)
テングサは寒天やトコロテンの原料となる重要な水産資源である。生育域は南北半球の温帯〜亜熱帯であり全国的に生育しているが、国内水産資源としてのテングサは千葉県から長崎県にかけての、いわゆる太平洋ベルト地帯で多く採取されている。採取されたテングサは各地域の漁協が主となって入札会が開催され、落札されていく。
2024年の国内テングサ入札会は、3月14日の静岡県第1回入札会から始まり、11月21日の東京都第1回入札会をもって終了した。全国の主な入札会の合計出品量は99.3トン(表1)で、2023年の出品量と比較して80.7%と減産した(2023年全国入札量:123トン)。過去7年(2017年〜)で比較しても、2021年の129.5トンを下回り最低となった。
入札会出品量と入札外数量を合計した全国生産量も190トン(表1;推定)となり、2023年と比較して70.9%と減産した(2023年全国生産量:268トン)。過去7年(2017年〜)で比較しても最低である。全国的な減産によりテングサ価格が高騰したが、特に徳島県産テングサ/愛媛県産テングサ/千葉県産テングサの減産が、全国的なテングサ相場に大きな影響を与えた。
徳島県第1回入札会は、全漁連(※1)主催の入札会では年内最初の入札会であり、全国のテングサ相場を左右する重要な入札会である。本入札会の2024年生産量は3.8トン(※2)と2023年よりは増産はしたが、例年の生産量からすれば大減産している。続いて開催される愛媛県入札会の出品量もかなり減産していた為、本入札会(徳島県入札会第1回入札会)で先にテングサを確保しようとする動きが強まった。
愛媛県第1回入札会は全国のテングサ入札会の中でも生産量が多い入札会である。この入札会での確保の成否が各業者の年間在庫に大きく影響を与える。しかし、2024年出品量は2023年出品量と比較して64%(※3)と大減産した為、本入札会(愛媛県第1回入札会)でも購入競争が激化した。
千葉産テングサも全国的には生産量が多い地域であるが、2023年8月から収穫量が激減し続けている。その結果、2024年生産量は55トン前後と推定され、2023年と比較して55%程度(推定)の大減産であった。例年と比較しても36%程度(推定)となり大減産であった。
伊豆産テングサ(静岡県産テングサ/東京都伊豆諸島産テングサ)はブランド銘柄であり、特に伊豆諸島産テングサは他地域では殆ど出品されない太いテングサが多い(オオブサ;Gelidium pacificum)。この為、他産地では代替が難しく、2024年出品量も2023出品量と比較して22%と大減産した為、伊豆諸島産テングサは過去10年で最も高騰した。
全国的な減産の原因として、2017年8月から続く黒潮の大蛇行の影響が大きいと考えられる。ただ、生産量の経時的変化は地域毎に特徴があり、黒潮大蛇行の影響は全国一様でないと考えている。地域毎の生産量変化と黒潮大蛇行との考察は別途報告予定である。
テングサの生長には下記事項が必要と考えられており、各漁連・漁協は生育状況や海域等の研究を開始している。また、全漁連と大学で日本近海の環境調査を協同研究する予定との報告もある(※4)。これらの研究が即座に生産量の増加に繋がることは難しいが、情報の蓄積が未来に繋がっていくことを期待したい。
【テングサの生育条件】
@ 胞子着床時期(1月〜3月)に海水温が13℃(〜15℃)以下となること。
A 海水の栄養塩が豊富であること。
B テングサ生長期(4月〜6月)に海水温が上昇すること。
C テングサ採取時期(4月〜8月)に天候が良いこと。
【表1:全国の主な入札会出品量と全国生産量(1月1日〜12月31日)】
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| 産地\年 |
2024年 |
2023年 |
2022年 |
2021年 |
2020年 |
2019年 |
2018年 |
2017年 |
| 東京都 |
2.7 |
12.4 |
14.5 |
17.0 |
35.8 |
30.3 |
28.1 |
30.8 |
| 静岡県 |
40.3 |
43.5 |
37.5 |
44.9 |
36.4 |
45.5 |
64.5 |
85.6 |
| 三重県 |
3.8 |
3.8 |
3.2 |
1.4 |
2.6 |
3.7 |
8.3 |
11.0 |
| 和歌山県 |
14.3 |
9.9 |
11.2 |
13.6 |
14.4 |
18.9 |
15.9 |
13.8 |
| 徳島県 |
5.6 |
2.2 |
10.4 |
11.8 |
34.2 |
34.3 |
36.0 |
30.5 |
| 愛媛県 |
31.6 |
49.8 |
65.7 |
39.2 |
83.9 |
103.5 |
114.3 |
134.0 |
| 高知県 |
0.1 |
0.3 |
0.1 |
0.6 |
1.9 |
7.6 |
11.0 |
9.0 |
| 長崎県 |
0.9 |
1.1 |
1.1 |
1.0 |
1.8 |
1.6 |
1.3 |
3.3 |
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| 上記産地計 |
99.3 |
123.0 |
143.7 |
129.5 |
211.0 |
245.4 |
279.4 |
318.0 |
| 全国生産量※1 |
190 |
268 |
331 |
313 |
429 |
457 |
411 |
471 |
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《外国産テングサ(2024.1.1〜2024.12.31)》
2024年(1月〜12月)の総輸入量は1,497トンで(表2)、2023年の総輸入量と比較して略同量であった(2023年1,450トン;±5%以内の変化は略同じとして記載)。過去6年(2018年〜)で確認しても、輸入量は略平均な値であった。
韓国産テングサの2024年の輸入量は187トンであり、2023年の輸入量と比較して49%と減少した(2023年383トン)。2023年の輸入量増加は、急激な円安による輸入価格の高騰に加え、2024年の生産量が少ないという情報により、各業者が事前に輸入した為と考えられた。2024年の輸入量減少は、韓国産テングサの生産量自体が大減産した為であり、国内余剰の影響ではないと考えられる。輸入平均単価(※6)は、韓国産テングサの減産に加え、国産テングサの減少と高騰の影響を受け、前年比110%となった。過去6年(2018年〜)で確認すると、輸入量は過去3番目に少ない。2023年が過去6年(2018年〜)で最も多かったのと比較すると対照的である。
モロッコ産テングサの2024年の輸入量は991トンと、2023年の輸入量と比較して125%と増加した(2023年は790トン)。急激な円安による輸入価格は上昇したが(輸入平均単価は前年比106%)、それ以上に国産テングサや韓国産テングサの減産・高騰し、更に2023年輸入量の減少で国内在庫が少なくなった為、2024年の輸入量は増加したと考えられる。過去6年(2018年〜)で確認すると、輸入量は最も多い。
2024年全期を通しての為替動向は以前不透明であるが、2023年から2024年にかけての急激な円安状態が続いており、今後もテングサの輸入価格は高値維持となる懸念がある。特に韓国産テングサは、国産テングサと性状が似ている為、国産テングサが減少している中、需要の集中が予想される。人件費の上昇も重なり、更なる高値の懸念がある。
【表2:テングサ輸入量(1月〜12月)】
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2024年 |
2023年 |
2022年 |
2021年 |
2020年 |
2019年 |
2018年 |
平均 |
| 輸入総量 |
1,497 |
1,450 |
1,513 |
1,152 |
1,433 |
1,731 |
1,627 |
1,486 |
| 韓国 |
187 |
383 |
318 |
182 |
260 |
181 |
271 |
255 |
| モロッコ |
991 |
790 |
877 |
637 |
569 |
802 |
680 |
764 |
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財務省貿易統計より(単位:トン)
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※1:入札会出品量と入札会外数量(千葉県等)を合計した推定数量。
※2:徳島県入札会出品量(2024年)=第1回3.8トン+第2回1.8トン
※3:愛媛県入札会出品量(2024年)=第1回25.1トン+第2回6.5トン 愛媛県入札会出品量(2023年)=第1回39.0トン+第2回10.8トン
※4:日本経済新聞2025年1月21日
※5:入札会出品量と入札会外数量(千葉県等)を合計した推定数量。
※6:輸入平均単価:赤テングサ価格、水洗テングサ価格、晒テングサ価格を合計して算出。一般的に晒テングサは赤テングサより高い為、晒テングサの輸入量が増えると高値、赤テングサの輸入量が増えると安値となる。この為、必ずしも輸入平均単価が各テングサ価格を反映しているとはいえない。
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(報告/社長 森田尚宏)
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01 2025/3/6 伊豆産テングサ第1回入札会(静岡県第1回入札会)
例年通り3月上旬、伊豆産テングサ第1回入札会(静岡県第1回入札会)が開催された(3月6日)。出品量は5,136kgと昨年同時期と比較して86%と若干減産した(2024年第1回出品量6,005kg)。ただし、本入札会で出品されるテングサは2024年収穫分であり、2025年産テングサではない。
静岡県水産・海洋技術研究所伊豆分場での第1回生育状況調査(下田市白浜地区)によると、生育量は900グラム/m2と昨年より430グラム/m2減っていた(※1)。長さも平均13.5センチと去年より約4センチ短かったが、調査は来月にかけて伊豆半島沿岸のおよそ35地点で行われる為、全体の傾向は今後の調査結果次第である。ここ数年の出品量からみれば、2017年から2020年にかけて大きく減産したが、それ以降は大きな変動はみられない(※2)。
入札会で出品されるテングサの状態を確認する為、前日にテングサ保管庫を回った。結果、ある産地のテングサは全体的にカキの付着は少なく、特に三等テングサはドラクサ含量が低く、ケグサに近い感覚で使用できると感じた。一方で別産地の青トラ銘柄は4種出品されていたが、各々晒具合が異なっていた。赤が若干多かった銘柄もあり、もう少し晒加工をして頂ければ有り難いと感じた。具体的な使い勝手を確認できる為、実際に確認することは必要である。
入札業者は6社。内、1社はFAX入札であった。本入札会は2025年入札会の1回目であり、今後のテングサ相場に影響を与える。初回から相場を高騰させたくない一方、先手確保の業者や確保必須の業者もみえたと思われ、複雑な思惑が交錯した入札会となった。結果、入札価格は大きく2グループに分かれたが(予想)、結局は確保必然な業者が落札をし、落札価格はかなりの高騰をみせた。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:静岡NEWS WEB テングサの生育状況を調査 https://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/20250308/3030027265.html
※2:(株)森田商店HP 太平洋沿岸域のテングサ生産量の変動について https://www.tengusa.jp/reports/kaiseki_2024_05.html#2024_05

仁科・枯野公園

潮間帯に生息するヒジキ(テングサはその下層;仁科・枯野公園)

海面に港が映る(仁科港)

西伊豆には春が到来(クリスタルビーチ)

ジオパークに認定された複雑な海岸(仁科・堂ケ島公園)

ジオパークに認定された複雑な海岸(仁科・堂ケ島公園)

ジオパークに認定された複雑な海岸(仁科・堂ケ島公園)

複雑な海岸に波飛沫があがる(仁科・沢田公園)
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02 2025/7/10 伊豆産テングサ第2回入札会(静岡県第2回入札会)
伊豆産テングサ第2回入札会(静岡県第2回入札会)が昨年と同時期の7月上旬(7月10日)に開催された。出品量は4,688kgと昨年同時期の69%であった(2024年第2回出品量6,777kg)。第1回入札会の出品テングサは2024年に収穫された分の為、今回からが2025年採取分である。2020年からは少ないながらも割合安定していた為、今回の減産は予想外であった。ただ産地別に見ると、採取業者が増加して増産した産地もあった。また、第2回迄の今回までの累積出品量は9,824kgとなり、昨年の同時期と比較して77%であった(図1;2024年7月迄の累計出品量=12,782kg)。
気象庁は5月8日の時点で東海沖での黒潮大蛇行が見られなくなり、収束する兆しがあると発表した(※1)。水産物の生産量は黒潮大蛇行に起因することが多いが、伊豆半島や伊豆諸島、千葉県等は黒潮の大蛇行点から距離がある為、大蛇行終了がこれらの地域に影響を与えるかは不明瞭である。実際、2025年の西日本のテングサ生産量は回復傾向だが(後述;2025年第1回徳島県入札報告・2025年第1回愛媛県入札報告)、伊豆産テングサは現段階で減産傾向であり、伊豆諸島産テングサもあまり生育していないとのことである。近年、黒潮の極端な北上が報告されていることから(※2)、東日本での黒潮潮流に変化が起きており、こちらが影響している可能性がある。
テングサの様相を確認する為、入札会前日と当日に、各産地の倉庫に出向いて出品されるテングサを確認した。全体的に例年通りの感じであり、使い勝手も想像しやすかった。しかし、一部の産地では通常出品されるテングサよりカキ(石灰藻)が多く付着していた。改良状態に対する意識の差と思われたが、綺麗なテングサから順に高値落札となった為、改良状態の参考になりやすいと感じた。
入札業者は6社。内、1社はFAX入札であった。各業者とも、入札価格は先に開催された第1回入札会の落札価格を参考に検討された感があった。この為、前回から大幅な高騰はしなかったものの、やはり前回同様の高値落札となった。ただ、落札者は複数に渡った為、各業者の相場観は近接していると想像された。近年の高騰が売上げに影響しているのか、各業者ともできるだけ高値落札は控えたいとも感じた。次回は9月、価格安定の為にも出品量が増えることを期待した。
(報告/社長 森田尚宏)

図1. 伊豆産テングサ(静岡県産テングサ)入札会の累積出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
黒潮の変化と生産量の変化の関連性は不明瞭。
※1:気象庁HP
7年9か月続いた黒潮大蛇行が収束する兆し。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2505/09a/press_kuroshio_path.html
※2:気象庁 大気海洋部 気候情報課 異常気象情報センター
令和6年7月以降の顕著な高温と7月下旬の北日本の大雨の特徴と要因について
https://www.data.jma.go.jp/extreme/kaigi/2024/0902/r06_1st_gidai2_202409.pdf

穏やかな内湾側の堂ヶ島

波が強い外海側の堂ヶ島

切り立った地形の堂ヶ島

切り立った地形の黄金崎

波が強そうな黄金崎

黄金崎展望台へ

稲取漁港

稲取海岸の岩には海藻が付着。遠くには伊豆大島

稲取でのテングサ粗改良

複雑な地形の須崎海岸
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03 2025/7/17 徳島県産テングサ第1回入札会
徳島県第1回入札会が7月17日に開催された。出品量は4,891.1kgであり、昨年同時期と比較して128%と増産した(2024年第1回出品量=3,811.9kg)。ただし、例年であれば20,000kg程度出品されていた為、少ない方である。2014年から確認すると、2021年から激減して2023年に一旦0kgとなったが、その後回復に転じている(2014年;32,631kg、2015年;17,404kg、2016年;20,644kg、2017年:18,200kg、2018年;16,117kg、2019年;21,866kg、2020年;22,959.5kg、2021年;4,377kg、2022年;5,014.2kg、2023年;0kg、2024年3,811.9kg、2025年4,891.1kg:図1)。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、紀伊水道の水産物の生産量に特に影響を与えたと考えられる。実際、徳島県産テングサは黒潮大蛇行発生に追随して生産量は減産している(図1)。一方2024年からは増産に転じていることから(図1)、この頃から既に黒潮潮流に変化があった可能性がある。先日、気象庁から黒潮大蛇行が終息しつつあると発表されたが(※3)、この終息が即座に今年のテングサ生産量に影響を与えたとは考えにくい。いずれにしても詳細は南部と北部に分けて年間を通して解析をする必要がある。
徳島県立農林水産総合技術センターよれば、今年は例年より深層域でテングサが生育しているとの事。大分県産テングサも深層域(15メートル〜18メートル)や別地域で採取して増産していることから、通常の生息域以外で生息している可能性がある。これまで生育していた地域は黒潮大蛇行の影響を受けて減産したが、深層域や別地域では黒潮大蛇行の影響を然程受けなかった可能性がある。採取業者が採取地域を変更することは困難であるが、これまでの採取地域以外(深層域や別産地)では生育している可能性があり、増産の希望が持てる。
徳島県漁連には前日入りして出品されるテングサを確認した。北部地域は内湾環境の為、海流の変動が少なく、例年カキが多く付着してしまうが、今年はカキの付着が少なく良好な状態であった。一方で南部地域は海流の変動が大きい為、カキはあまり付着せず太いテングサとなるが、今年も同様にカキの付着は少なく太いテングサに生長していた。全体的にテングサの状態は良いと思われた。
入札業者は6社。出品量は大幅な増産ではない為、通常であれば入札価格は昨年価格が参考にされ、必要であればそれ以上の価格が入札される。しかし、続いて開催される愛媛県入札会は昨年の200%と大幅に増産している為、本入札会(徳島県入札会)では抑え気味にして、愛媛県入札会で購入する方針もあった。各社の判断が分かれるところであり、実際、南部地域の太いテングサは昨年価格より高値落札となったが、北部地域のテングサは昨年価格よりも落ち着いた価格で落札された。久々の相場安定でひとまず安心し、続いて開催される愛媛県入札会の入札会場である松山へと車を走らせた。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
7年9か月続いた黒潮大蛇行が収束する兆し。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2505/09a/press_kuroshio_path.html

図1. 徳島県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

徳島県漁連に集荷されたテングサ

欄干で阿波踊りを踊る

商店街の阿波踊り人形
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04 2025/7/18 愛媛県産テングサ第1回入札会
愛媛県第1回入札会が徳島県入札会に続いて7月18日に開催された。出品量は49,963kgであり、昨年同時期と比較して199%と大幅に増産した(2024年第1回出品量=25,129kg)。近年の生産量を確認すると、2014年から徐々に減産しはじめ、2024年に最低出品量となったが、今年増産に転じている(図1)。この時期における50,000kg近い出品量は2022年の52,505kgから3年ぶりとなる。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。しかし、瀬戸内海や豊後水道に面した愛媛県は、黒潮大蛇行の発生個所である潮岬南部とは地理的な距離がある。また、愛媛県産テングサの減産は黒潮大蛇行発生以前より始まっていることから(図1)、大蛇行の影響を受けていたかは不確定である。
先日、気象庁から黒潮大蛇行が終息しつつあると発表された(※3)。しかし、この終息が即座に影響を与え、今回の増産に繋がったとは考えにくく、別要因がある可能性がある(「大蛇行とは別の黒潮潮流の変化」や「環境の変化」)。実際、大分県や徳島県では深層域(15メートル〜18メートル)や別産地で採取されているとのこと。詳細は瀬戸内海と豊後水道に分けて年間を通して解析をする必要がある。
愛媛県漁連には前日入りして出品されるテングサを確認した。状態は略銘柄通りで、「〇」銘柄は異物が少なく綺麗であった。「寄」銘柄は異物の少ない産地もあったが、異物が多い産地もあった。テングサを選別し、良質のものを「〇」銘柄とし、それ以外を「寄」銘柄とした為であろう。また、ある産地のテングサは例年ドラクサが若干混合しており、それにより強度のあるテングサとなっていたが、今年はドラクサの含有量が少ないように感じた。この点が良いか悪いかは別問題であり、今年はこのような状態のテングサとして理解する必要がある。
入札業者は7社。上記の通り、出品量は昨年の200%と大幅に増産した。前日の徳島県入札会では入札価格は安定しており、今回の愛媛県入札会も安定した価格になると予想された。実際、開票されると昨年価格よりも落ち着いた価格で落札された。伊豆入札会や東京都入札会は出品量が少なく高騰する懸念があったが、西日本の入札会は安定した相場になる気配があった。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
7年9か月続いた黒潮大蛇行が収束する兆し。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2505/09a/press_kuroshio_path.html

図1. 愛媛県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

みかんをどうぞ(松山空港)

また来てね(松山空港)

3日間の出張を終え、セントレア空港に戻る
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05 2025/7/31 城ヶ島産テングサ第1回入札会
城ヶ島第1回入札会が7月31日に開催された。出品量は770.8kgであり、昨年同時期と比較して42%と減産した(2024年第1回出品量=1,814kg)。同時期における近年の生産量を確認すると、増減を繰り返しており、一定の傾向があるか把握することは困難であった(図1)。これは第1回のみの出品量であり、また他産地よりも出品量が少ない為と考えられる。年間累計出品量を解析し、更に近隣の伊豆諸島産テングサや千葉県産テングサの生産量変動と併せて考察すれば傾向を把握できる可能性がある。
城ヶ島産テングサは伊豆諸島産テングサと同様にアラメ主体のテングサである。ただ、伊豆諸島産テングサは昨年同様、出品量はかなり少ない見込みである為(※1)、今回出品される城ヶ島産テングサは希少な国産アラメということとなる。サンプルは事前に送って頂き、確認したところ、カキや異物は少なく上質なテングサであった。
入札業者は4社。上記の通り、城ヶ島産テングサは希少な国産アラメである為、高額落札になると思われた。実際開票されると昨年の終値よりも更に高値で落札され、予想以上の結果となった。アラメを使用するとトコロテンは硬くなり、それを好むお客様もみえるが、ここまで高騰すると、国産アラメを購入してお客様に紹介することが妥当か一考してしまう。代替可能なテングサも並行して検討が必要であろう。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:テングサ産地視察(東京都・伊豆大島) https://www.tengusa.jp/reports/shisatsu_2025.html#2025_02

図1. 城ヶ島産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
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06 2025/8/20 長崎県産テングサ入札会
長崎県入札会が8月20日に開催された。出品量は2,182.5kgであり、昨年同時期と比較して233%と大幅に増産した(2024年出品量=936.5kg)。ただし、近年の生産量を確認すると、2014年から2017年迄は3,000kg〜4,000kgで推移しており、2018年からは減産して1,000kg〜2,000kgで推移している(図1)。例年から見れば少ないといえる。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。しかし、長崎県は、黒潮大蛇行の発生個所である潮岬南部とは地理的な距離がある。減産のタイミングは黒潮大蛇行の開始時期と同時期であるが、黒潮大蛇行の影響というよりも別の潮流変化による影響であろう。
先日、気象庁から黒潮大蛇行が終息しつつあると発表された(※3)。しかし、この終息が即座に影響を与え、今回の増産に繋がったとは考えにくく、別要因がある可能性がある(「大蛇行とは別の黒潮潮流の変化」や「環境の変化」)。近似多項式では2021年から徐々に増産傾向である為、黒潮大蛇行終息以前から潮流の変化があった可能性もある。
長崎県産テングサのサンプルは事前に送付して頂き、様相を確認した。出品されるテングサは一般的なケグサである「マクサ」と等外の「オバクサ」である。等外といっても一般的なケグサの「マクサ」でないだけであり、強度が出るテングサの為、使い方次第で有効なテングサとなる。カキの付着量は「マクサ」も「等外」も少なく良質であった。
入札業者は5社。これまで実施された「徳島県入札会」「愛媛県入札会」の傾向から、相場は割合安定すると考えられた(城ヶ島入札会はアラメ主体の為、マクサ相場とは異なる)。ただし、昨年(2024年)は長崎県産テングサを必要としていた業者が高値で落札された為、今年もどのようになるかは不確定であった。実際に開票されると、今回は西日本のテングサ相場が参考にされたと考えられ、落札価格は昨年よりも安定していた。相場の急激な下落は市場に混乱をもたらすが、この傾向は購入業者にも採取業者にも良い影響を与えると思われた。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
7年9か月続いた黒潮大蛇行が収束する兆し。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2505/09a/press_kuroshio_path.html

図1. 長崎県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
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07 2025/8/28 和歌山県産テングサ入札会
和歌山県入札会が8月28日に開催された。出品量は15,978.5kgであり、昨年同時期と比較して112%と増産した(2024年出品量=14,287kg)。近年の出品量では、2015年から2019年にかけては増産、2020年から2023年は減産、2024年から再度増産に転じており特徴的である(図1)。ただ、和歌山県・南部(日高〜太地)と和歌山県・北部(加太)それぞれで確認すると、南部は減産傾向、北部は増産傾向であった(図2)。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。中でも和歌山県・南部は黒潮大蛇行の発生個所(潮岬南端;※1,※2)から地理的に近く、黒潮大蛇行の影響を強く受けた可能性がある。実際、黒潮大蛇行の発生(2017年8月)に追随して生産量は減産した(図2)。この変動は、同じく潮岬から近い徳島県の生産量とも似ている(03 2025.7.17徳島県産テングサ第1回入札会)。
一方、和歌山県・北部は黒潮大蛇行の発生時期(2017年8月)以降でも増産傾向であった(図2)。北部は大阪湾に近く、黒潮大蛇行の発生個所(潮岬)から距離がある為、影響をあまり受けなかったと考えられる。2014年から2019年にかけての増産は、水産資源としての価値が上昇して採取された為と考えられる。
先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※3)。しかし、この終息が即座に生態系に影響を与え、今回の増産に繋がったとは考えにくい。また、南部・北部ともに2024年から増産していることから、今回の大蛇行終息以前から黒潮潮流に変化があり(または環境の変化)、増産に繋がった可能性がある。
和歌山県の海岸は複雑で、特徴的なテングサが育まれる為、トコロテン製造に好む業者も多い。特に南部は外洋に面しており、テングサから抽出される寒天質のゼリー強度が高い傾向にある。マクサ以外でもサルクサ(学名;オバクサ/和歌山県入札会では夏草と呼称)が多く生育し、今年は例年より更に多く出品されていた。サルクサからもゼリー強度の高い寒天が抽出されるが、カキが付着しやすいテングサでもあり、使い勝手をイメージして入札する必要があった。他に寄草も出品されていたが、雨当たりや異物が混入しており、もう少し選別して頂けると有難かった。
入札業者は9社、内FAX入札は2社。これまで実施された「徳島県入札会」「愛媛県入札会」「長崎県入札会」の傾向から、相場は割合安定すると考えられた(城ヶ島入札会はアラメ主体の為、マクサ相場とは異なる)。ただ、北部の加太は14,100sと出品量が多く(全体の88%)、30kg×90本以上の切札で入札される為、入札価格はかなり近接すると予想された。この為、確実に確保したい業者は予想価格より少し高値で入札し、1番札で落札していった。全体的に昨年よりも安定した価格で落札されたと言える。相場の急激な下落は市場に混乱をもたらすが、この傾向は購入業者にも採取業者にも良い影響を与えると思われる。続く三重県入札会もこの傾向となると予想された。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

図1. 和歌山県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

図2. 和歌山県産テングサ入札会の出品量(北部・南部比較)
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

和歌山城

ライトアップされた和歌山城

和歌山県産テングサの見本

南部はマクサとサルクサの混合が多い

北部はマクサが多い

雨当りやカキが付着した産地もある。
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08 2025/8/29 三重県産テングサ入札会
三重県入札会が8月29日に開催された。出品量は10,756kgであり、昨年同時期と比較して286%と増産した(2024年出品量=3,755kg)。10,000s以上の出品量は2017年以来であり、大幅に増産したと言える(図1)。近年の出品量を確認すると、2018年から2021年にかけて減産しているが、2022年から徐々に増産し、2025年大幅に増産した(図1)。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。三重県産テングサの出品量は、黒潮大蛇行の発生に追随して減産していることから(図1)、黒潮大蛇行の影響を受けた可能性がある。ただし、三重県は黒潮大蛇行の発生個所(潮岬南端;※1,※2)から若干距離があり、また和歌山県・南部や徳島県・南部程は大減産程していないことから(表1)、和歌山県・南部や徳島県・南部程、黒潮大蛇行の影響を強く受けていない可能性がある。
先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※3)。しかし、この終息が即座に生態系に影響を与え、今回の大増産に繋がったとは考えにくい。また、2022年から徐々に増産していることから、この頃から黒潮大蛇行の影響を然程受けていなかった可能性がある。2025年の大増産は別途黒潮海流に変化があった可能性も考えられる。
三重県の海岸は和歌山県同様複雑で、テングサから抽出される寒天質は硬くなる傾向にある。この為、好んで使用される業者もみえるが、近年はテングサが細くなっている傾向があり、気になるところである。今回はヨリクサが多く出品されたが、トリクサの方が太くしっかりしているので、今後トリクサの出品量が増えることを期待したい。他にもトリアシやオニクサといった外観が特徴的なテングサも出品される。これらが採取されるのも三重県の複雑な海岸の賜物であろう。
入札業者は7社。三重県の入札は他産地と異なり、1品毎の電子入札の為、相場を把握しやすい。一方で、事前の予想相場と異なっていた場合、早急に入札価格を再検討せねばならず、臨機応変な対応が必要となる。昨日に開催された和歌山県入札会の落札価格は落ち着いた価格であった為、今回もその傾向があると予想していたが、実際の落札価格は予想よりも更に落ち着いていた。相場の急激な下落は市場に混乱をもたらすが、この傾向は購入業者にも採取業者にも良い影響を与えると思われる。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

図1. 三重県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
表1:各海域の生産量(各域の入札会出品量)1月1日〜12月31日/単位:kg

◎各域の最大生産量、○各域の最小生産量 最小/最大:最小生産量/最大生産量×100(%)
「三重県」の最小生産量は最大生産量の13%であり、「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」程、低くない
(和歌山県・南部=8%、徳島県・南部=5%)。
この為、「三重県」は「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」程、大減産していないといえる。

テングサ保管場

テングサ見本一覧
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09 2025/09/04 徳島県産テングサ入札会
徳島県入札会が例年通り9月上旬(9月4日)に開催された。出品量は年間累計で6,647kgとなり、昨年と比較して119%と増産した(2024年出品量=5,598kg)。近年では2020年から2021年にかけて激減し、2023年の出品量は例年の10%以下となったが(2,180s)、その後、徐々に増産に転じている(図1)。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。特に徳島県・南部(由岐〜鞆浦)は黒潮大蛇行の発生個所(潮岬南端;※1,※2)から地理的に近く、黒潮大蛇行の影響を強く受けた可能性がある。実際、徳島県・南部(由岐〜鞆浦)の生産量を確認すると、2020年から2021年にかけて激減しており、黒潮大蛇行発生から若干時間は経っているが、影響を強く受けていると考えらえた(図2)。この変動は、同じく潮岬から近い和歌山県・南部の生産量や高知県の生産量とも似ている(07 2025.8.28和歌山県産テングサ入札会/10 2025.9.4高知県入札会)。一方で北部(北泊〜伊島)の生産量は少量で傾向把握は困難であったが、割合安定しているようであった(図2)。北部は紀伊水道に面しており、黒潮大蛇行の発生個所(潮岬)から距離がある為、影響をあまり受けなかった為と考えられる。
先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※3)。しかし、この終息が生態系に影響を与え、2025年の増産に繋がったとは考えにくい。実際、増産は2024年から始まっており、他地域の生産量変化も併せて考察すると、大蛇行終息以前から黒潮潮流に変化があった可能性がある(または環境の変化)。
徳島県産テングサは和歌山県産テングサと同様、南部と北部で性状が異なる。南部は太平洋に面している為、海流が強く、更に海岸が複雑である。この為、生育するテングサも毛先が細かく、硬さと粘りのバランスがとれた寒天質が抽出される。一方で北部は紀伊水道に面した穏やかな海域の為、フケやカキは付着しやすくなるが、粘りの高い寒天質が抽出される。例年、9月に出品されるテングサは、カキや異物の付着が多くなるが、今回出品されたテングサにはあまりフケやカキの付着が確認されず良質であった。ただロット(本稿では「梱包されている袋」を指す)によってはフケやカキが付着した銘柄もあり、バランスよくロットを確認する必要があった。
今回の入札業者は6社であったが(FAX入札は1社)、例年参加されている業者の内、1社が参加しなかった。このことと、これまでの入札会の傾向を合わせて検討すると、今回も相場は安定すると予想された。実際、競争が少ない分、高値がつきやすい銘柄のテングサも、安定した価格で落札された。他業者も徐々に揃いつつあるということであろう。明日開催される愛媛県入札会にもこの傾向が続くと思われた。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

図1. 徳島県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

図2. 徳島県産テングサ入札会の出品量(北部・南部比較)
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

徳島県漁連全容。スタイリッシュな建物が目を引く

テングサ保管庫。各銘柄を確認していく。

徳島県漁連近くの海岸にはチヌが沢山いた。

夏の夕方の徳島駅

阿波名産の「棒ういろ」。 なかなか美味しい。
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10 2025/09/04 高知県産テングサ入札会
高知県入札会が例年通り9月上旬(9月4日)に開催された。出品量は137.7kgと、昨年と比較して160%となった。ただし、昨年(2024年)出品量が86.1kgと少ない為、生育量が増えていると断言できない。近年の変動を確認すると2019年から2020年にかけて激減し、2021年からは1,000s以下となったままである(図1)。それでも出品して頂けること自体、大変有難いことである。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。特に高知県の産地は室戸岬から北東に伸びる海岸であり、黒潮大蛇行の発生個所(潮岬南端;※1,※2)から地理的に近い。この為、黒潮大蛇行の影響を強く受けた可能性があり、実際、黒潮大蛇行発生に追随して激減している。激減時期は2019年から2020年にかけてで、黒潮大蛇行発生から若干時間は経っているが、徳島県・南部よりは早く減産している。「各地域の生産量」と「大蛇行発生海域である潮岬南部からの地理的距離」は相関関係があるかもしれない。
高知県産テングサは徳島県産テングサと比較して若干細い印象がある。これは産地である室戸岬から北東に伸びる海岸が徳島県・南部程は複雑でないことに由来する可能性がある。今回、出品されたテングサも若干細い印象があったが、カキの付着は夏草としては少なく、使いやすいのではと感じた。
入札会は今年も徳島県漁連で徳島県産テングサ入札会と合同で開催された。入札業者は6社で、内FAX入札は1社。これまでの入札会の傾向から、高知県産テングサの落札価格も安定すると予想された。実際、開票されてみると想定よりも更に安定した価格で落札された。
先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※3)。この終息がこの海域の生態系に影響を与えるかは不明だが、地元の水産業発展の為にも今後の増産に期待したい。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

図1. 高知県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
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11 2025/09/05 愛媛県産テングサ入札会
愛媛県入札会が例年通り9月上旬(9月5日)に開催された。出品量は累計で61,997sとなり、昨年と比較して196%と増産した(2024年出品量=31,644kg)。近年では2014年から激減傾向が続き、2024年に31,644sと過去最低となったが、2025年に増産に転じた(図1)。
愛媛県産テングサは「豊後水道側で採取されるテングサ」と「瀬戸内海側で採取されるテングサ」で性状が若干異なる。「豊後水道側で採取されるテングサ」は粘りと弾力のバランスがとれたトコロテンができるのに対し、「瀬戸内海側で採取されるテングサ」は粘り重視のトコロテンができる。豊後水道側は外洋環境で割合波が強い環境であり、瀬戸内海側は内湾環境で穏やかな海域であることが影響しているのであろう。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。しかし、「豊後水道側で採取されるテングサ」も「瀬戸内海側で採取されるテングサ」も黒潮大蛇行発生以前から減産傾向であり(図2)、生産量の減少は黒潮大蛇行以外の要因がある可能性がある。実際、最小生産量も最大生産量の21%であり、黒潮大蛇行の影響を強く受けたと考えられる「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」ほど減産していない(表1)。豊後水道側は外洋環境ではあるが、黒潮大蛇行の発生個所(潮岬南端;※1,※2)から地理的に遠いことも影響しているのであろう。
入札会場には当日入りして、サンプルを確認した。この時期に出品されるテングサはカキやフケが付着する傾向があるが、今回はカキやフケの付着状況は少なく、良質なテングサが多かった。ただヨリクサ等は例年通りカキが多く付着しており、また銘柄によっては湿気が多く含んでいるテングサもあった。どちらも歩留に関係してくるが、ある程度対応して頂ければ有難い。
入札業者は6社。これまでの入札会の傾向から、愛媛県産テングサの相場も安定すると予想された。実際、他業者も徐々に揃いつつあると思われ、安定した価格で落札された。今回の四国入札会が来週開催される伊豆産テングサ入札会にどのように影響するか、相場が気になるところである。
先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※3)。この終息がこの海域の生態系に影響を与えるかは不明だが、地元の水産業発展の為にも今後の増産に期待したい。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

図1. 愛媛県産テングサ入札会の出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時

図2. 愛媛県産テングサ入札会の出品量(豊後水道・瀬戸内海比較)
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
表1:各海域の生産量(各域の入札会出品量)1月1日〜12月31日/単位:kg


愛媛県テングサ入札会会場

愛媛県テングサ入札会付近の港

入札会場にてテングサの状態を確認する。

また来てね(松山空港)

雲海が広がっていた(帰りの飛行機の中から)
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12 2025/09/11 伊豆産テングサ第3回入札会(静岡県第3回入札会)
伊豆産テングサ第3回入札会(静岡県第3回入札会)が昨年と同時期の9月上旬(9月11日)に開催された。出品量は7,549kgと昨年同時期と比較して略同量であった(2024年第3回出品量7,691kg)。一方で、今回迄の累積出品量は17,373kgで、昨年と比較して若干減産した(図1;2024年累計出品量20,473s)。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。しかし、伊豆半島は黒潮大蛇行の開始点(潮岬南部)から距離がある為(※1,※2)、大蛇行が強く影響を与えていたかは不明瞭である。実際、最小生産量は最大生産量の30%程度であり(表1)、「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」といった黒潮大蛇行の影響が強い地域程は減産していない。減産開始時期も2017年からであり、大蛇行開始点に近い「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」よりも早く減産している為(和歌山県・南部:2020年〜、徳島県・南部:2021年〜)、別要因が影響を及ぼしている可能性がある。
黒潮潮流に関しては黒潮大蛇行以外に、近年、黒潮の極端な北上が報告されている(※3)。この為、東日本においても黒潮潮流が変化している可能性があり、この変化が伊豆産テングサの減産にも影響しているかもしれない。先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※4)。しかし、上記のことより即座に増産に転じるとは明言できない。勿論、何が原因であるにせよ、増産は望んでいる。
入札会では前日に現地入りして、各産地の倉庫で出品されるテングサを確認した。例年、夏草はカキ(石灰藻)やアオ(珪藻)の付着が多くなるが、今回は予想よりはカキやアオの付着は少なく、乾燥状態も良好であった。また、ある産地では改良前と改良後のテングサを見させて頂き、カキやアオを十分に除去して頂いていることを実感した。改良されていない銘柄もあり、カキやアオの付着が目立ったが、相応の価格で落札できれば問題ない。
入札業者は6社。内、2社はFAX入札であった。西日本でのテングサ入札会の落札価格は落ち着き始め、各業者とも必要なテングサは確保し始めていると思われた。この為、伊豆産テングサの落札価格も落ち着くのではという期待感があった。しかし、実際開票されると前回の入札価格を踏襲した高額落札となり、やはり伊豆産テングサがブランド品であることを実感した。全国の入札会は残すところ、10月の伊豆産テングサ入札会と11月の伊豆諸島産テングサ入札会(東京都産テングサ入札会)のみである。今後もこの相場が続くか、落ち着いていくか注視していきたい。
(報告/社長 森田尚宏)

図1. 伊豆産テングサ(静岡県産テングサ)入札会の累積出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
黒潮の変化と生産量の変化の関連性は不明瞭。

表1:各海域の生産量(各域の入札会出品量)1月1日〜12月31日/単位:kg
伊豆半島の生産量は第3回入札会迄の累積出品量
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁 大気海洋部 気候情報課 異常気象情報センター
令和6年7月以降の顕著な高温と7月下旬の北日本の大雨の特徴と要因について
https://www.data.jma.go.jp/extreme/kaigi/2024/0902/r06_1st_gidai2_202409.pdf
※4:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

西伊豆・彫刻ロード(あちこちに彫刻がある)

西伊豆・雲見海岸(西伊豆は割合穏やかだ)

西伊豆・雲見海岸(まだまだ夏の雲が湧き立つ)

西伊豆・雲見産テングサ

西伊豆・仁科海岸(仁科の海に夕日が沈む)

東伊豆・稲取漁港

東伊豆・須崎漁港

東伊豆・須崎産テングサ

東伊豆・須崎海岸(透明度が凄い)

東伊豆・須崎海岸(外洋は更に透明度と波が凄い)

東伊豆・須崎海岸(柱状節理が発達)

東伊豆・須崎海岸(隠れ家的なビーチ)

東伊豆・須崎(爪木埼灯台)まるでジブリのよう
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13 2025/10/09 伊豆産テングサ第3回入札会(静岡県第3回入札会)
伊豆産テングサ第4回入札会(静岡県第4回入札会)が昨年と同時期の10月上旬(10月9日)に開催された。出品量は9,326kgと昨年同時期と比較して119%と増産した(2024年第4回出品量7,852kg)。一方、今回迄の累積出品量は26,699kgで、昨年と比較して若干減産した(図1;2024年累計出品量28,325s)。最終的な2025年の出品量は11月に開催される最終入札会との累計で決定されるが、若干減産ではないかと予想される。
2017年8月から潮岬南部で始まった黒潮大蛇行(※1,※2)は、水産物の生産量に影響を与えたと言われている。しかし、伊豆半島は黒潮大蛇行の開始点(潮岬南部)から距離がある為(※1,※2)、大蛇行が強く影響を与えていたかは不明瞭である。実際、最小生産量は最大生産量の37%であり(表1)、「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」といった黒潮大蛇行の影響が強い地域程は減産していない。減産開始時期も2017年からであり、大蛇行開始点に近い「和歌山県・南部」や「徳島県・南部」よりも早く減産している(和歌山県・南部:2020年〜、徳島県・南部:2021年〜)。この為、伊豆産テングサの生産量変化は別要因が影響している可能性がある。
黒潮潮流に関しては黒潮大蛇行以外に、近年、黒潮の極端な北上が報告されている(※3)。この為、東日本においても黒潮潮流が変化している可能性があり、この変化が伊豆産テングサの減産にも影響しているかもしれない。
入札会では前日に現地入りして、各産地の倉庫で出品されるテングサを確認した。第3回同様、夏草はカキ(石灰藻)やアオ(珪藻)の付着が多くなるが、出品される銘柄の大部分が改良されており、カキやアオの付着が少なかった。また、未改良品でも然程状態は悪くない銘柄もあった。一方で、改良銘柄でもカキやフケが他銘柄よりも付着しているものもあり、実際に確認することは必要であった。いずれにしても相応の価格で落札できれば問題ない。
入札業者は6社。内、2社はFAX入札であった。西日本でのテングサ入札会の落札価格は落ち着き始めたが、前回入札会(第3回入札会)では、これまでの入札価格を踏襲した高額落札であった。この為、どういった傾向になるかは不明瞭であったが、今回は若干落ち着いた価格となった。各業者ともに伊豆産テングサも確保でき始めていると予想された。残すところ11月の伊豆諸島産テングサ入札会(東京都産テングサ入札会)のみである。先日(2025年8月29日)、気象庁から黒潮大蛇行が2025年4月をもって終息したと発表された(※4)。上記のことより即座に増産に転じるとは明言できないが、増産されることを期待していきたい。
(報告/社長 森田尚宏)

図1. 伊豆産テングサ(静岡県産テングサ)入札会の累積出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。青線:黒潮大蛇行終了時
黒潮の変化と生産量の変化の関連性は不明瞭。

表1:各海域の生産量(各域の入札会出品量)1月1日〜12月31日/単位:kg
伊豆半島の生産量は第3回入札会迄の累積出品量
※1:気象庁HP https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
※2:吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※3:気象庁 大気海洋部 気候情報課 異常気象情報センター
令和6年7月以降の顕著な高温と7月下旬の北日本の大雨の特徴と要因について
https://www.data.jma.go.jp/extreme/kaigi/2024/0902/r06_1st_gidai2_202409.pdf
※4:気象庁HP
黒潮大蛇行の終息について https://www.jma.go.jp/jma/press/2508/29a/20250829_end_of_kuroshioLM.html

台風前の黄金崎

夕焼けの駿河湾(黄金崎)

ピンク色に染まっていく(黄金崎)

絵画のようだ(黄金崎)

富士山の秀麗なシルエットと駿河湾(黄金崎)

稲取産テングサ(稲取)

台風が近づく稲取漁港(稲取)
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