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てんぐさ入札会報告
毎年6月から10月にわたって行われるてんぐさ入札会の報告です。
てんぐさ入札会報告 令和3年(2021)
00 2021/03/31 令和2年度てんぐさ概況
01 2021/03/11 静岡県第1回入札会
02 2021/06/23 徳島県第1回入札会
03 2021/07/08 静岡県第2回入札会
04 2021/07/12 愛媛県第1回入札会
05 2021/07/15 東京都第1回入札会
06 2021/08/05 城ケ島第1回入札会
07 2021/08/20 和歌山県入札会
08 2021/08/27 三重県入札会
09 2021/09/09 静岡県第3回入札会
10 2021/09/15 徳島県第2回入札会
11 2021/09/16 高知県入札会
12 2021/09/17 愛媛県第2回入札会
13 2021/10/07 静岡県第4回入札会
14 2021/11/11 静岡県第5回入札会
15 2021/11/18 東京都第2回入札会
16 2021/12/13 2021年(令和3年)テングサ概況(2021年1月〜2021年12月)

00 2020年(令和2年)(2020.1~2020.12)てんぐさ概況

 2021.(令和3)3.31全国のてんぐさ入札(生産)量

以下の表は、2020年(令和2年)の年別テングサ生産数量(入札数量+入札外数量)です。

産地\年 令和2年
2020年
令和元年
2019年
平成30年
2018年
平成29年
2017年
平成28年
2016年
平成27年
2015年
平成26年
2014年
東京都 40 35 34 42 35 44 52
静岡県 41 48 69 90 110 111 106
三重県 3 4 8 11 11 8 8
和歌山県 14 19 16 14 12 9 12
徳島県 34 36 36 31 36 26 45
愛媛県 88 103 114 135 118 149 160
高知県 3 9 13 9 16 11 29
長崎県 5 5 4 6 13 20 13
上記産地計 228 259 294 338 351 378 425
全国生産量 429 458 411 471 563 486 510

(単位:トン)株式会社 森田商店 調べ R3(2021)/3/31

 2020年は11月19日の東京都第3回入札会で終了したが一年を通じて異常な年となった。
 全国の生産数量は入札数量と入札外数量で429トンになった。2019年は458トンだったので6.3%減となり2年前と同程度の少ない生産量となった。
 一部産地(東京都、兵庫県、大分県)は微増となったものの他の地域では前年を下回る結果となった。
 2020年の1月、2月が記録的な暖冬で水温が高く推移し、黒潮の大蛇行とあいまって(天草の着床に適した13℃より高いこと、また黒潮の栄養塩が低いこと)不作が予想されていた。
 2019年千葉県房総半島では150トンほどの水揚げがあり2020年も同程度の151トンとなり他地域の減産をカバーした。
 採取時の天候状況では4月から6月までは採取して乾燥させるのに好都合な天候が続いたものの7月は記録的な長雨(「令和2年7月豪雨」)に影響され採取が止まることとなった。また、8月は酷暑の日が続きこれも浜で天草を乾燥させるのに厳しい作業を強いられることとなり減産に拍車をかけた。
 また、2020年2月から始まった新型コロナウィルス蔓延により4月からの都市部緊急事態宣言は高級魚介類の消費が減り、浜では天草採取の意欲が高まったものの大きな増産とはならなかった。しかも新型コロナウィルス騒動の行動自粛から天草を使った寒天原料の菓子類(羊羹など)の大きな消費減があり天草は減産であるにもかかわらず価格面では下げることとなった。
 一方、輸入に関してみれば韓国は3年間の高値買付契約が2019年に終了し2020年には新価格帯で動き始めた。2020年は260トン、価格は前年比25%安の1,050円/kg(前年は181トン1,398円/kg)であった。また、最大輸入国のモロッコからは2020年は569トン510円/kg(前年は802トン581円/kg)と数量減と価格下落がみられ、先安を見込み当面の輸入量が抑えられている。
 今年のテングサ状況をみるに最大産地となった千葉県房総半島では今のところ昨年同様の動きがみられ相当量の収穫が予想される。
 また、今冬の天然寒天(長野県・角寒天、岐阜県・細寒天)生産は前年のような暖冬ではないものの不安定な天候状況と新型コロナ影響下での寒天製品の販売不振もあり、予定の生産に至らず終了した。結果、前年同様繰り越しのテングサが多くなっている。
 首都圏始め各地の新型コロナ対策緊急事態宣言の解除(令和3年3月現在)もあるが、未だ警戒も続いている。
 早く終息して活況に転ずることを願うばかりである。

*輸入統計は財務省貿易統計より、価格はCIF(保険料、運賃込み)

(報告/社長 森田庄次)

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01 2021/03/11 静岡県第1回入札会

 静岡県第1回入札会が3月上旬に開催された(3月11日)。例年は2月中旬に開催されているが、今回はコロナウイルス感染予防の一環で3月に実施された。毎年4月に開催される入札会も昨年に続き開催されず、次回は7月に開催予定である。
 出品量は6,875kgと、昨年の第1回入札会と比較して2%増産した(2020年2月19日;6,751kg)。ただし昨年は出品量が少なく、過去5年でみると減産傾向である(2016年第1回入札会=17,225kg、2017年第1回入札会=15,950kg、2018年第1回入札会=8,650kg、2019年第1回入札会=7,200kg)。内訳は仁科産テングサが5,950kg、安良里/宇久須/小下田産テングサが925kgであった。
 本入札会は全国の中で最も早く開催される入札会である。この為、今年の相場動向を左右する重要な入札会となる。因みに昨年の静岡県入札会のテングサ相場は、他の入札回とは異なった相場動向を示した。これは静岡県入札会で出品されるテングサが伊豆産テングサであり、ブランド品の為と思われる。
 入札されるテングサを実際に確認したところ、良好な状態であった。等級毎に様相は異なり、カキやフケが多いテングサもあったが、相応の価格で落札できれば様々な使い道が考えられた。等級は生産者や組合の判断に委ねられる為、等級が同じでも様々な様相をしており実際に確認する必要はあった。
 入札業者は7社。内、FAX入札は2社であった。大減産した昨年と同等量の為、落札価格が安値になるとあまり期待できなかった。しかし、コロナウイルスにより経済活動が縮小しているのか、入札業者にも強い購入の傾向は感じられなかった。実際、開票されてみると昨年よりも落ち着いた価格で落札された。次回静岡県入札会は7月8日の予定である。

(報告/常務 森田尚宏)

黄金崎

黄金崎より

仁科漁港


入札会場

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02 2021/06/23 徳島県第1回入札会

 徳島県第1回入札会が昨年度同時期の6月中旬に開催された(6月23日)。出品量は4,377kgと、昨年の第1回入札会と比較して19%の大減産である(2020年6月25日;22,960kg)。原因は明確ではないが、昨年の12月末〜3月末迄、徳島県北部海岸地域(鳴門〜阿南中央)で珪藻類(Eucampia)が確認されており、栄養塩が珪藻類に摂取された可能性がある。栄養塩が減少した為、他の海藻類の生育が悪くなった可能性がある。南部海岸地域での珪藻の確認は実施されていないが、同様の事象が発生していると考えられる。
 出品量が少ないのは徳島のみの傾向ではない。静岡県入札会は、例年6月末迄に3回(2月4月6月)開催されているが、今年は1回のみ(3月:7月開催予定)、大分県入札会は例年6月末迄に2回(4月6月)開催されているが、今年は1回のみ(4月:7月開催予定)、淡路島入札会は例年6月末迄に2回(5月6月)開催されているが、今年は7月に第1回入札会が予定されているのみである。
 前日から徳島県漁連に出張して実際にテングサの様相を確認した。今回、顕著に例年と異なっていると感じたのは北部海岸地域のテングサであった。この地域のテングサは、通常カキが多く付着してしまうが、今回はカキの付着が少なく綺麗であった。カキの付着は石灰藻が関与するが、栄養塩が少ないと石灰藻の生育も悪くなり、カキの付着も少なくなると考えられる。上記の様に珪藻類が発生して栄養塩が少なくなっている可能性が示唆された。他地域でも例年よりカキの付着が少なく綺麗なように感じられた。ただし、枯葉等の異物があったり、フケが多く付着している銘柄もあったりしたので、こういったテングサについては異物除去をしっかりしてほしいと思う。
 入札業者は8社。内、FAX入札は1社であった。今回は昨年の19%と大減産である為、入札価格には頭をなやませた。先に開催した入札会(静岡県入札会・大分県入札会)は落ち着いた価格をみせたが、今回は異なると考えられた為である。実際開票されてみると、想定した価格よりもかなりの高額落札となった。7月に入ってからは大分県・淡路島・静岡県・愛媛県と立て続けに入札が続く。特に愛媛県入札会には今回の徳島県入札会の落札価格が大きな影響を与えると思われた。

(報告/常務 森田尚宏)

淡路島から鳴門海峡と鳴門大橋を望む。夏の気配を感じる

徳島県入札会場(2021.6.23)例年(下写真)よりもかなり少ない

昨年の徳島県入札会場(2020.6.25)

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03 2021/07/08 静岡県第2回入札会

 静岡県第2回入札会が昨年と同時期の7月上旬に開催された(7月8日)。出品量は8,365kgと、昨年同時期の入札会と比較して133%の増産である(2020年7月9日;6,296kg)。今回迄の累積出品量でも15,240kgとなり、昨年同時期迄の累積出品量と比較して117%と増産した(2020年7月9日迄:13,047kg)。しかし、長期的にみると減産傾向であり、過去5年で最も多かった2016年と比較すると25%であった(7月迄の累積出品量:2016年60,813kg、2017年45,225kg、2018年25,490kg、2019年25,400kg、2020年13,047kg、2021年15,240kg)。全国的にも生産量は減少しており、徳島県入札会は昨年の19%、兵庫県(淡路島)入札会は昨年の44%である。
 昨年の静岡県入札会での出品量減産については、海水温と出品量の関係について解析を実施している。その結果、やはり黒潮の蛇行が影響している可能性が高いと推測された(※)。今年もその可能性は高いと推測される。因みに今年の徳島県での減産は珪藻類の発生によるとのこと。珪藻の発生と黒潮の蛇行についての関連性を検討しても良いかもしれない。
 前日から各生産地に出向いて直接テングサを確認した。西海岸から出品されるテングサ(仁科・小下田)ではカキの付着が少ない一方、東海岸から出品されるテングサ(須崎)はカキやフケの付着が多いと感じた(ただし須崎産テングサはこの後、選別工程が実施される為、出品時にはカキやフケは除去されている)。カキの付着は石灰藻が関係する為、付着が少ないということは石灰藻の生長が遅いということになる。この地域の栄養塩がどのように推移しているか気になるところである。因みに須崎では解禁日が例年よりも遅く、まだ1回しか採取していないとのこと。今後1回〜2回採取される為、生産量は増えると予想される。
 入札業者は8社。内、FAX入札は1社であった。昨年よりは増産しており、第1回入札会では落ち着いた価格を見せたが、直近の入札会(徳島県・大分県・兵庫県)では値上がり傾向にあった。この為、今回も入札値は頭を悩ますこととなり、結果、想定していた価格よりも落札値は高かった。やはり全国的な減産が影響していると思われた。次回は愛媛県入札会であるが、愛媛県でも減産している為、同様の傾向が予想される。

伊豆白浜海水温とテングサ出品量(伊豆半島/伊豆大島)の関係

(報告/常務 森田尚宏)

東伊豆海岸(須崎)での選別作業

東伊豆海岸(白浜)。海の水が透明で綺麗。

西伊豆海岸(堂ヶ島)。伊豆ジオパークならではのダイナミックな景観

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04 2021/07/12 愛媛県第1回入札会

 愛媛県第1回入札会が昨年と同時期の7月上旬に開催された(7月12日)。出品量は31,093kgと、昨年同時期の入札会と比較して45%で、徳島県入札会と同様に大減産である(2020年7月4日;68,342kg)。過去5年で確認しても最も少ない出品量である(2016年93,407kg、2017年102,042kg、2018年91,925kg、2019年82,966kg、2020年68,342kg、2021年31,093kg)。
 今回も昨年に引き続きFAX入札となった。サンプルを送付して頂き、テングサを確認する。この時期に出品されるテングサは大半が春季に採取している為、綺麗な様相のテングサが多いが、今回は異物が多く確認される銘柄もあった(ただし、カキの付着は少なく感じた)。晒テングサは良く晒されているテングサも有れば、赤の割合が多いテングサもあり、これまでの落札価格から検討するよりは、やはりテングサ自体を確認して検討する必要があった。
 入札業者は7社。大減産していることや徳島県入札会での高額落札から、今回の落札値も高くなるであろうと予想された。問題はどの程度の価格で落札できるかであり、またしても非常に頭を悩ますこととなった。結果、想定した価格よりも更に上を行く高額落札となった。6月の徳島県入札会、7月の静岡県入札会、愛媛県入札会が終了し、今年の入札会の方向性がほぼ決定した。全国的に出品量が少ないことがかなり落札値に影響を与えている。

(報告/常務 森田尚宏)

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05 2021/07/15 東京都第1回入札会

 東京都第1回入札会が昨年より1ケ月遅い、7月中旬に開催された(7月15日)。出品量は7,500kgと、昨年の第1回入札会と比較して46%の大減産となった。この時期迄の累積出品量を過去5年で比較しても最も少なかった(2016年8,561kg、2017年11,881kg、2018年14,263kg、2019年13,104kg、2020年16,350kg、2021年7,500kg)。
 今回出品されたテングサを確認したところ、全体的にカキの付着が少なく綺麗であった(大島南方のテングサは割合カキの付着が多かった)。減産しつつもテングサにカキの付着が少ないという現象は徳島県産テングサと似ている。徳島県での減産は珪藻類が発生したことによる栄養塩不足とのこと。栄養塩不足の為、テングサのみならず、カキの原因なる石灰藻類も生長できず、カキの付着が少なかったのではないかと考える。東京都漁連の方も、今年の夏期海水温が昨年よりも高いにも関わらず(※下記グラフ)、テングサの生長が悪い為、栄養塩不足の可能性を考えられていた。現在、栄養塩不足を回避させていく方法を検討されていた(東京都漁連主体で実施している為、ここでの詳細は控えさせて頂く)。
 因みに今回出品される「荒(毛混)」も「天赤(荒混)」も様相は似ており、荒(アラメ)と天赤(ケグサ)の割合が同等であった。銘柄のみから判断すれば「荒(毛混)」は荒(アラメ)が主体であり、「天赤(荒混)」は天赤(ケグサ)が主体となる為、実際によく確認することはやはり重要である。
 入札業者は8社。東京都も大減産しており、更にこれでの高額落札から、今回の落札値も高くなるであろうと予想された。しかし、東京都産テングサは特徴的なブランド品である為、想定外の価格は入札されないのではと予想した。結果、やはり高値とはなったが、想定内の落札価格であった。次回は8月20日の和歌山県入札会である。

例年よりもかなり少ない出品量

コロナ感染対策の為、例年とは別のところで入札

伊豆大島の海水温比較(2020年/2021年)
2021年の海水温は6月後半から高くなっている。
参考:東京都島しょ農林水産総合センター 海の天気図
(伊豆大島海水温と天草生物量を解析いたしました。こちら

(報告/常務 森田尚宏)

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06 2021/08/05 城ケ島第1回入札会

  城ケ島第1回入札会が昨年より1ヶ月早い、8月上旬に開催された(8月5日)。出品量は2,126kgと、昨年の第1回入札会と比較して70%の減産となった(2020年第1回入札会:3,044kg)。しかし、この時期迄の累積出品量を過去5年で比較すると大きな変動はないともいえる(2016年2,149kg、2017年2,360kg、2018年780kg、2019年2,514kg、2020年3,044kg、2021年2,126kg)。
 城ケ島産テングサの出品量は東京都産テングサの出品量と相反することが多い。今年は東京都産テングサの出品量は46%と大減産している為、増産するのではとも期待した。しかし、城ケ島産テングサも減産しており、全国的な減産傾向が城ケ島にもあてはまった。
 今回出品されたテングサを確認したところ、いつも通りカキの付着が少なく綺麗であった。入札業者は5社。全国的な減産の影響で今回の落札値も高くなるであろうと予想された。しかし、城ケ島産テングサの様相は東京都産テングサと似ている為、東京都産テングサの入札価格が参考になると考えられた。結果、東京都産テングサの落札価格が想定内であった為、城ケ島産テングサの落札値も高値ではあったが、想定内の落札価格であった。次回は8月20日の和歌山県入札会である。

(報告/常務 森田尚宏)

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07 2021/08/20 和歌山県入札会

 和歌山県入札会が昨年と同時期の8月中旬に開催された(8月20日)。出品量は13,631kgと、昨年と比較して95%で若干減産したのみであった(2020年入札会:14,374kg)。過去5年で比較しても然程変動はみられない(※1)。しかし、加太(淡路島対岸の産地;下図)が占める割合が年々増加しており、今年は86%を占めている(※2)。その意味では加太が増産傾向、その他産地(出雲・上野等)は減産傾向といえる。
 テングササンプルを確認したところ、カキやアオの付着は少なかった。特に西海岸の産地でその傾向が見られ、対岸の徳島県産テングサと同様であった。徳島県産テングサも減産しているが、原因は珪藻類の大発生による栄養塩不足とのこと。和歌山県の減産もその要因を受けたかもしれない。一方で加太は大阪湾に近い為、大阪湾の栄養塩の影響を受けて増産したかもしれない。
 入札業者は8社。内、FAX入札は6社であった。加太以外の産地は減産していることから、高値になると予想された。また加太は増産しているが近年落札競争が激化している産地である為、こちらも高値になると予想された。実際、開票されるとかなりの高額落札となった。ただ、見方を変えれば徳島県入札会や愛媛県入札会での落札価格とバランスがとれた価格ともいえた。来週は大分県入札会、長崎県入札会、三重県入札会と続けて実施される。

※1:2016年11,579kg、2017年13,790kg、2018年15,863kg、2019年18,872kg、2020年14,374kg、2021年13,631kg

※2:2017年34%、2018年24%、2019年58%、2020年71%、2021年86%

(報告/常務 森田尚宏)

産地地図(加太)

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08 2021/08/27 三重県入札会

 三重県入札会が8月下旬に開催された(8月27日)。例年は7月下旬と8月下旬に開催されるが、今年はこの1回のみである。出品量は1,390kg、昨年累計と比較すると54%となり、かなりの減産である(2020年入札会累積出品量:2,598kg)。過去5年で比較してみても年毎に減産しており、特に2017年と比較すると13%となった(※1)。減産の原因の一つとして天候不順(ゲリラ豪雨や8月に入ってからの長雨等)による収穫日数減が大きいとのこと。また、暖冬による高海水温の為、元々の生育量が減産していることもあげられる。
 今回も昨年に引き続きFAX入札である。事前にサンプルを取り寄せてテングサを確認する。凡そ状態は良かったが、1ケ所だけ通常の様相とはかなり異なる産地のテングサがあった。ケグサというよりは強度のでるサルクサのようであった。いつも使用して頂いているお客様に様相を連絡し、方針を決める。
 入札業者は6社。内、県内業者は3社であった。今回は出品量が少量の為、運賃で高くなってしまう可能性がある。全国的に落札価格はかなり高騰しているが、そういった点を考慮すれば入札価格の高騰は抑えられるのではと予想した。実際、落札価格は高くなったが想定外の落札価格ではなかった。次回は静岡県入札会が実施され、そのあと四国入札会へと続く。

※1:2016年10,797kg、2017年11,023kg、2018年8,256kg、2019年3,675kg、2020年2,598kg、2021年1,390kg

(報告/常務 森田尚宏)

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09 2021/09/09 静岡県第3回入札会

 静岡県入札会が昨年と同時期の9月上旬に開催された(9月9日)。出品量は10,409kgと昨年同時期と比較して38%増産した(2020年第3回入札会:7,548kg)。昨年累計と比較しても125%と、全国的な減産が続く中での増産である。しかし、過去5年で比較すると減産傾向で、特に2016年と比較する34%である(※1)。
 テングサの様相を確認する為、前日から各産地に出張した。ある産地の赤テングサにはフケやカキが多く付着した状態であったが、これからフケやカキ等の異物を除去していくとのこと。今回サンプルを頂いて弊社で晒加工をしてみたところ、割合フケも除去され晒状態も程々に仕上がった。また、別の産地では晒テングサが出品されており、上々の様相であった。ただし「晒」というより、赤が若干混合していた為、「トラ」と認識しておいた方が良いと思われた。
 入札業者は7社。内、FAX入札2社であった。全国的に落札価格は高騰しており、本入札会でもその傾向となると考えられた。実際、開票されると高騰迄とはならなかったが、やはり落札値は高かった。来週、入札後半の山場となる四国入札会が開催される。

※1:2016年75,368kg、2017年58,075kg、2018年35,638kg、
2019年30,281kg、 2020年20,595kg、2021年25,649kg

(報告/常務 森田尚宏)

雲見海岸

仁科夕景

堂ケ島海岸

入札会場

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10 2021/09/15 徳島県第2回入札会

 徳島県第2回入札会が9月中旬に開催された(9月15日)。出品量は7,466.6kgと昨年同時期と比較して66%と減産した(2020年第2回入札会:11,249.5kg)。昨年累計と比較すると更に減産しており35%である(第1回入札会の大減産によるところが大きい)。過去5年で比較しても減産傾向で、特に2016年と比較すると33%となった(※1)。
 今回はコロナ禍によりFAX入札となった為、漁連の方からサンプルとサンプル動画を送付して頂いた。サンプル量も多く(出品量の多いテングサは複数サンプル有)、動画も良く撮影されていた為、実際の様相を良く把握できた。
 今回出品されるテングサは夏期に採取されている為、やはりカキの付着が多かった。カキの付着はテングサの品質を落としてしまうが、一方で栄養塩が増加したことの証とも捉えることができる。この為、テングサの生育に良いと考えることもできる。事実、カキ付着の少なかった第1回入札会(2021年6月23日;春期に採取されたテングサ)では、海水の栄養塩が少ない為に大減産したが(昨年比19%)、今回はそこまでの大減産とはならなかった。
 入札業者は7社。全国的に落札価格は高騰しているが、今回は夏草ということもあり、入札価格の相場を見極めるのに苦慮した。しかし、前述の様に徳島県第1回入札会では大減産であった為、相応に各業者は希望すると判断した。実際、開票されると、やはり落札値は高く、特に寒天用のテングサの高騰が目立った。続いて高知県入札会、愛媛県入札会が開催される。

※1:2016年36,110kg、2017年30,486kg、2018年36,017kg、2019年34,312kg、
2020年34,209kg、2021年11,843.6kg

(報告/常務 森田尚宏)

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11 2021/09/16 高知県入札会

 高知県入札会が9月中旬に開催された(9月16日)。出品量は602.2kgと昨年同時期と比較して32%と大減産である(2020年入札会:1,857.7kg)。過去5年で比較しても高知県産テングサはかなり減産しており、特に2018年と比較すると5%まで減産している(※1)。
 高知県入札会でもコロナ禍によりFAX入札となった為、漁連の方からサンプルを送付して頂いた。出品量が少ないながらも、サンプル量は多くして頂き、実際の様相を良く把握できた。
 今回出品されるテングサの大部分は晒テングサであったが、晒具合は良好なものが多く、綺麗に晒されていた。一方で赤テングサは晒テングサも混合している銘柄もあり、落札できたとしても使用方法を検討しなければならないものもあった。
 入札業者は5社。昨日の徳島県入札会では落札価格が高かった為、ある銘柄には影響を与えると思われた。一方で出品量が少ない銘柄は運賃が高く発生してしまうこともあり、そこまで高騰しないとも考えられた。実際開票されてみると、やはり落札価格が高くなった銘柄とそこまでならなかった銘柄に分かれた。四国入札会は愛媛県入札会を最後に今年は終了する。

※1:2016年10,683kg、2017年8,975.8kg、2018年10,989.5kg、2019年7,607.9kg、
2020年1,857.7kg、2021年602.2.kg

(報告/常務 森田尚宏)

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12 2021/09/17 愛媛県第2回入札会

 愛媛第2回県入札会が9月中旬に開催された(9月17日)。出品量は8,114kgと昨年同時期と比較して52%と大減産である(2020年入札会:15,562kg)。過去5年で比較してもかなり減産しており、特に2017年と比較すると29%まで減産している(※1)。
 愛媛県入札会でもコロナ禍によりFAX入札となった為、漁連の方からサンプルとサンプル動画を送付して頂いた。他四国入札会の時と同様、サンプル量も多く、動画も良く撮影されていた為、実際の様相を良く把握できた。本入札会で出品されるテングサは夏草(夏期に収穫したテングサ)の為、カキの付着が多い傾向があるが、特に寄草でカキの付着が目立った。枯葉や他海藻等の異物も割合多かった為、こちらは極力除去をして頂きたいところである。
 入札業者は7社。愛媛県入札会では出品されるテングサ量は通常多いが、今回は少ない。この為、本入札会でも購入希望が高いと判断された。また前々日の徳島県入札会でも落札価格が高かった為、今回もその傾向があると思われた。実際開票されてみると、やはり高値落札が目立った結果となった。本入札会をもって全漁連主催の入札会は終了した。残りは東京都入札会と静岡県入札会である。

※1:2016年118,364kg、2017年133,979kg、2018年114,332kg、2019年103,473kg、
2020年83,904kg、2021年39,207kg

(報告/常務 森田尚宏)

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13 2021/10/07 静岡県第4回入札会

 静岡県第4回入札会が10月上旬に開催された(10月7日)。出品量は9,277kg、昨年同時期と比較して126%の増産である(2020年入札会:7,377kg)。現時点での累積出品量も34,926kgで昨年と比較して、125%の増産である(2020年10月上旬までの累積出品量:27,972kg)。全国的な減産の中、静岡県(伊豆)では増産している為、他地域と海洋条件が異なっているのであろう。ただし、過去5年でみると減産傾向であり、2016年の累積出品量と比較すると38%である(※1)。
 今回の出品される産地は「稲取(若干量)」「須崎」「八木沢」で、事前に各産地に赴きテングサの状態を確認した。
須崎産テングサはこれまで通り、太く(ケグサの中では)、選別されていた為、綺麗であった。また、アラメは然程太くなく、使い勝手が良さそうであった一方、アカアオは割合アオが多い印象であった。
 八木沢は全体的にカキの付着は少なく、晒具合も上々であった。採取業者の方が、銘柄の種類が多すぎるかとの相談を受けたが、“特に問題はありませんよ”と返答した。銘柄は入札価格の参考にはなるが、最終的にはテングサ自体を確認して相応の価格を決定していく為である。例えば今回出品された寄赤トラは、個人的には寄トラとしてもよいと判断した。ただし、これは見付けする人の目線による為、寄赤トラとみなす業者もいるであろう。
 入札業者は7社。静岡県産テングサは昨年よりは増産したが、例年と比較すると減産傾向である。更に伊豆産テングサはブランドとして有名である為、これまでより安値で落札される可能性は少ないと判断した。実際、開票されると、これまでの落札価格を踏まえた高止まりの価格であった。静岡県入札会は次回で最終回となる。

※1:2016年90,932kg、2017年72,001kg、2018年55,917kg、
2019年38,775kg、2020年27,972kg、2021年34,926kg

(報告/常務 森田尚宏)

黄金崎海岸
(特徴的な岩と透き通る海)

黄金崎海岸の遊歩道

浮島(海底火山が作り出した岩礁)

浮島

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14 2021/11/11 静岡県第5回入札会

 静岡県第5回入札会が11月中旬に開催された(11月11日)。2021年の静岡県入札会は今回で最終である。出品量は10,020kgと、昨年同時期と比較して119%の増産である(2020年入札会:8,432kg)。累積出品量も44,946kgと、昨年と比較して、123%の増産している(2020年累積出品量:36,404kg)。全国的な減産の中、静岡県(伊豆)は増産したが、過去5年でみれば減産傾向であり、2016年の累積出品量と比較すると43%であった(※1)。
 因みにカジメという海藻は例年多量に生えるが、今年は一部地域(白浜)を除いて生えておらず磯枯状態である。原因は不明確であるが、やはり黒潮の蛇行が影響しているのではとのことであった。
 通常通り、前日に伊豆に入って各産地のテングサ状態を確認する。今回の出品される産地の内、ある産地のテングサは綺麗に晒加工が実施されており、異物も少なかった。この産地はこれまでも相応の値段で落札されており、それが採取業者の採取意欲と選別意欲の向上に繋がっているようだ。生産量も徐々に増産し始めており、採取業者・購入業者ともに良い状態となっている。別の産地でも良く選別され俵梱包も綺麗にされている為、業者の購入意欲の向上に繋がっている。一方で、銘柄とテングサの状態が異なっているものもあった為、注意する必要があると感じたのも事実である。
 入札業者は7社。内、FAX入札は1社。静岡県産テングサは昨年よりは増産したが、例年からみれば減産傾向であり、更に伊豆産テングサはブランドとして有名である為、極端に価格が下がることはないと思われた。実際、開票されると、一部では若干価格が下がったが、全体的にみればこれまでの落札価格を踏まえた価格となった。

※1:2016年103,488kg、2017年85,593kg、2018年64,524kg、
2019年45,506kg、2020年36,404kg、2021年44,946kg

(報告/社長 森田尚宏)

外浦海岸

小下田海岸と富士山

白浜海岸

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15 2021/11/18 東京都第2回入札会

 東京都第2回入札会が11月中旬に開催された(11月18日)。本入札会で2021年の東京都入札会は終了、全国で開催される入札会もこれにて終了。出品量は9,548.8kgと、昨年同時期と比較して49%と減産した(2020年第2回入札会出品量+2020年第3回入札会出品量=19,477kg)。累積出品量も17,049kgと、昨年と比較して48%と減産している(2020年累積出品量:35,828kg)。同じ伊豆地域(※1)でも増産している静岡県入札会(伊豆半島)とは対照的である。やはり黒潮の蛇行が原因ではないかと考えられるが、全国的にも減産傾向である為、静岡県産テングサが特異的であるともいえる。
 内訳としては伊豆大島が97%(9,233.9kg)と大半を占め、新島や三宅島等、伊豆大島を除く南部が激減していた。小笠原諸島の海底火山噴火による軽石の漂着は、三宅島で確認されているが、入札会以降(11月20日以降)である。この為、今回の出品量の激減とは関係ないといえる。またオイルディフェンス等で軽石漂着の対策を実施しており、2022年春からの生育に影響を与えないようにしている。大変な状況とは思うが、漁業者の方々も頑張って頂ければと願う。
 伊豆大島の中では波浮地区が最も出品量が多く、54%(4,994kg)を占めている。東京都第2回入札会の全体出品量の中でも52%を占める為、一大生産地といえる。波浮地区は伊豆大島の中でも外洋側である為、地形的な特徴が影響を与えていると思われる(強い海流や黒潮等)。
 テングサの種類としてはケグサが10%(917kg)、アラメが90%(8,631.8kg)であった。アラメは海流の強い場所に生育する傾向があり、実際、アラメは外洋側の波浮地域から51%が出品されている(4,417kg)。一方でケグサは激減している為、入札価格の高騰が予想された。
 晒加工に関しては、静岡県産テングサと同様、どの産地も綺麗に晒されており、採取業者の加工意欲向上が感じられる。また銘柄のアオも、いつも通りアオ含有率は少なく、良質なテングサであった。
 入札業者は7社。上記の通り、ケグサが激減している為、ケグサの入札値が上がることが懸念された。また、アラメも例年よりは減産している為(2021年出品量=13,161.8kg、2020年出品量=33,475.8kg)、然程入札値が下がることは期待できなかった。実際、開票されてみるとケグサや黄晒の落札値は高騰し、特に黄晒の落札値は想定外の価格となった。本入札会で2021年入札会は終了、2022年入札会は2月または3月の伊豆入札会で始まる。

※1:東京都入札会で出品されるテングサは伊豆諸島。
【直近の東京都入札会での累積出品量】
2016年24,498kg、2017年30,789kg、2018年28,077kg、2019年30,285kg、2020年35,828kg、2021年17,049kg

(報告/社長 森田尚宏)

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16 2021/12/13 2021年(令和3年)テングサ概況(2021年1月〜2021年12月)

 《国産テングサ(2021年状況)》

 2021年の国内テングサ入札会は、3月11日の静岡県第1回入札会から始まり、11月18日の東京都第2回入札会をもって終了した。
 全国生産量は入札外数量も含めて推定287トンとなり、昨年生産量の66.9%(2020年全国生産量:429トン)と大幅に減産した。2017年から450トン前後で推移していたが(2016年は563トン)、今年は大幅な減産である。
減産の原因として、@黒潮の大蛇行、A海水の栄養塩不足(徳島県海域では春期に珪藻類が大発生、栄養塩を搾取した為、栄養塩不足となった)、B西日本地域〜東海地域での早期梅雨入りによる収穫日数の減少(九州北部地域:5/15、東海地域:5/16)等が考えられる。
 大幅な減産は入札会での落札価格に大きく影響した。特に徳島県第1回入札会の出品量は昨年比で19%であり、購入競争が激化して落札価格が高騰した。本入札会の落札価格が、続く他の入札会での落札価格に影響を与え、結果として全国的な落札価格の高騰に繋がった。
 静岡県の生産量は増加しているが、過去5年でみると減産傾向であり、またブランド品であることから、落札価格は高止まりの状態が続いている。
 来期(2022年)の生産量増加については、まずは下記条件が揃うことを期待する。
@ 胞子着床時期(1月〜3月)に海水温が13℃(〜15℃)以下となること。
A 海水の栄養塩が豊富であること。
B テングサ生長期(4月〜6月)に海水温が上昇すること。
C テングサ採取時期(4月〜8月)に天候が良いこと。

【全国産地別・生産量(入札会出品量+入札外数量)】

産地\年 令和3年
2021年
令和2年
2020年
令和元年
2019年
平成30年
2018年
平成29年
2017年
平成28年
2016年
平成27年
2015年
東京都 17 40 35 34 42 35 44
静岡県 46 41 48 69 90 110 111
三重県 1.4 3 4 8 11 11 8
和歌山県 22 14 19 16 14 12 9
徳島県 12 34 36 36 31 36 26
愛媛県 39 88 103 114 135 118 149
高知県 0.6 3 9 13 9 16 11
長崎県 5 5 5 4 6 13 20
上記産地計 143 228 259 294 338 351 378
全国生産量※ 287 429 458 411 471 568 486

(株)森田商店・調査より
※推定値/単位:トン(小数点以下は四捨五入)
三重県出品量(2021年)・高知県出品量(2021年)は1トン前後の為、小数点以下も表示。

 《外国産テングサ(2021.12.13現在)》

 外国産テングサの2021年10月迄の輸入量(年間輸入総量は2022年3月頃判明)は1,004トンと、2020年同期間(2020年1月〜2020年10月)の輸入量と比較して87%と減少した(2020年1,146トン)。2017年からの5年間でみても最も少ない。平均輸入価格は前年比82%となり、2017年からの5年間でも比較的安価となった。
 韓国産テングサの2021年10月迄の輸入量は172トンと、2020年同期間(2020年1月〜2020年10月)の輸入量と比較して93%と減少した(2020年184トン)。2017年からの5年間でみれば増減を繰り返しているが比較的安定した輸入量といえる。輸入価格は前年比79%となり、2017年からの5年間でも比較的安価となった。これは2019年に韓国内での3年間の高値買付契約が終了し、新しい展開となった為と思われる。
 モロッコ産テングサの2021年10月迄の輸入量は556トンと、2020年同期間(2020年1月〜2020年10月)の輸入量と比較して118%と増加した(2020年は473トン)。2017年からの5年間でみると増減を繰り返している。2021年の増加は2020年での輸入量が少なかった為と考えられる。輸入価格は77%となり、2017年からの5年間でも比較的安価となった。
 現在は(2021年12月13日)、円安傾向と原油高の影響で2022年の購入価格は若干上昇すると予測している。韓国では人件費も上昇していることから、その傾向が強まると予測する。

【1月〜10月迄の輸入量】

  2021年 2020年 2019年 2018年 2017年
総輸入量 1,004 1,146 1,456 1,324 1,281
韓国 172 184 104 203 476
モロッコ 556 473 758 653 476


【年間輸入量】

  2021年 2020年 2019年 2018年 2017年
総輸入量 集計中 1,433 1,731 1,627 1,630
韓国 集計中 260 181 271 535
モロッコ 集計中 569 802 680 519

財務省貿易統計より(単位:トン)

(報告/社長 森田尚宏)

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